スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日本語じゃないと、全然わからないのよ!の巻

水仙と由紀夫
背景の水仙が、全く似合わない由紀夫。




Pink Tea Time 2008年4月号

三月二十九日
 東京のコンビニで、石鹸を買った。包装箱が全て英語で書かれ、商品説明も英語であったので、輸入品だろうとよく見ると、それは日本の会社が作った、純粋日本製品であった。
 東京メトロの車内には、きれいな風景に英単語ばかりが並んでいる広告が、数枚貼られていた。よくよくみると、日本の会社の日本製品の広告であった。

三月三十日
 翌日青森に帰り、わからないことがあったので、職場で同僚に質問をした。すると、同僚は答えた。
「あ、それは、マウスをドラッグすると、ウインドウがプルダウンされます」
「・・・・・・・・・」
 家で新聞を開いた。
「コンプライアンス  江本孟紀」
 と毛筆で書かれた掛け軸を、スーツ姿の江本孟紀が持って微笑んでいる写真があった。武富士の全面広告だった。
「社内にコンプライアンス統括部を設置。全社員が研修を重ね、『コンプライアンス・オフィサー』資格を取った者が過去4年間で2410人にもなりました…」
 という丁寧な説明が添えられ、その中に「コンプライアンス」が五回出てきたが、コンプライアンスとは何なのか、どこにも書いていなかった。だから武富士は一体何を言いたかったのか、ほぼ不明であった。
 そういえば、武富士は昔、
「レッツゴー!
ウォンチューテイクマイハン~、
アイルビーユアマ~ン。
ソ~トゥナイ、ウィゴナダン、
アナタウェ~」
 というテレビCMで一世を風靡した会社である。突然レオタード姿の踊り子が続々登場し、ノリノリで皆が踊りまくっていた。しかしあれに関しても武富士は、一切説明をしていない。一体この者共は何者なのか? そしてなぜ、サラ金がノリノリダンスなのか? と誰もが疑問に思ったにもかかわらず、武富士側の説明はただ、
「ご利用は計画的に」
 という、主語も述語もないものであった。
「こっ、これは一体…!」
 日本国民が呆然としたが、翌日はそんな疑問も忘れ、皆が忘年会で武富士ダンスを、わらわらと踊っていたのである。文化祭でも相当数の高校生が、この踊りを踊ったらしい。
「意味不明」の勝利であった。
 そういえば「コンプライアンス」という言葉は、最近ニュースでもよく耳にしたよな。
何人かの国会議員が記者団に取り囲まれ、インタビューに応じていたのだが、
「コンプライアンスを実現するためにぃ!」とか、
「コンプライアンス精神に乗っ取ってですね…!」
などと発言していたのだ。しかし「コンプライアンス」とは何かという説明はどこにも無かった。

三月三十日
 ところで「キャリア教育」も最近の流行であり、私も何度かキャリア教育に関する講演会を聞く機会があった。そして、どの講師も必ず、「キャリアとは」と、言葉の意味説明から話しはじめ、それにかなりの時間を費やすというのがお約束となっていたと言っていい。つまり、聴衆の誰もが「キャリア」の意味を知らないというのが講師の前提であり、
「だったら、日本語で言え!」
 というのが、私の素直な感想である。私は「キャリア」の説明だけで、合計して数時間は聞いたかもしれない。
 この事実は時間だけでなく、紙も無駄にする。会議では資料も配られ、その中に必ず「キャリアとは何か」の説明があるからだ。だったら一言「勤労観教育」と言えばいいではないか。そうすれば語句説明の為に紙幅を費やすこともなく、単語自体に使う紙も減らせるのだ。例えば「キャリア」は四文字だが「勤労観」は三文字。これだけだと一字の違いでしかないが、「ウインドウ」なら五字で、「窓」なら一字。なんと紙幅は五分の一で済み、大変にエコロジーである。
 以前、確か青森県庁だったと思うが、「ナントカのグランドデザインを募集したところ、応募が大変に少なかった」と、県庁職員が嘆いたという話を聞いたことがある。
 当たり前だ。皆、「グランドデザイン」の意味がわからないので、応募できないのである。

三月三十一日
 そして職安系列で「ジョブカフェ」という施設がある。経済産業省「若者自立・挑戦プラン」の一環として作られた施設だ。
 私が以前、ジョブカフェ関連の会議に出席した時、実に久々に激怒した経験があるので、念のため書いておきたい。なぜなら「仏の妹子」と呼ばれる私が激怒する事件は、大変珍しいことだからである。
 まずこの「ジョブカフェ」という、英仏連合のような名称もさることながら、ここの事業もかなり意味不明と言えよう。
 詳細は忘れたが、ジョブカフェ職員は分厚い会議資料を配り、確か我々にこんな説明をしたと記憶している。
「インターンシップでは、ジョブ・ヒストリーが生かされます」
「ジョブカフェサポートセンターとは…かくかくしかじかのワンストップ・サービスセンターのことです」
「ワンストップ・サービスセンターとは…」
 彼らはカタカナ英語を多用するため、いちいちその説明が必要となり、しかしその説明が説明になっておらず、さらに説明が必要となるという悪循環に陥るのだ。
 私はその、無意味に長い会議も終わろうとする頃、サッと手を挙げた。
「ちょっと一言いいですか!」
 と、白戸(ホワイト)家の、犬のお父さんのように、断固として言ったのである。
「なぜ英語を使うんだ。そのせいでユーザーとコミュニケーションできず、ブラボーなプランもノーユース!」
 などとは決して言わなかった。私は、
「日本語じゃないと、全然わからないのよ!」
 と、きっぱりと言ってやったのである。

四月一日
 農薬に汚染された一連の輸入食品事件で、日本の食糧自給率が問題になった。現在はなんとたった三十九%だという。これは国力の低下である。他国に「お前になんか、食糧分けてやらないモンね」と言われたら、飢死が待っているということである。
 言葉でも同じだ。日本語訳が面倒だからと外国語に頼っていれば、日本語力は低下する。そして日本語の衰退は、即ち日本文化の衰退なのである。
スポンサーサイト

COMMENTS

COMMENT FORM

TRACKBACK


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。