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Pink Tea Time 1998年9月号

庭先の由紀夫2
                   縁側の猫のような由紀夫


「明日は、ゲイ・フェスティバル!」の巻

8月24日(月)
「自分がオバハンになったと思う瞬間。それは、男を股間から見てしまった時です」
 という投書が、週刊誌に出ていた。身につまされる話だった。
 最近私は、香港の映画監督ウォン・カーウァイの作品を集中して見ている。
 たとえば『恋する惑星』は、金城武のプードル的可愛さと、四ヵ国語を操る才能を堪能でき、カネシロファンにはたまらない作品と言っていい。でもそれだけじゃあ、まだお子様だね。
 なんと言っても注目は、もう一人の主演俳優、トニー・レオンだろう。彼の陰ある演技の中で強烈に心に残るのは、もう帰ってこない恋人を思い出し、バスルームで石鹸に話しかけるシーンである。
「どうしたんだ。こんなに痩せちゃって。前はあんなにふくよかだったのに・・・」
 小さくなった石鹸に語りかけるトニー。
ここで大抵の女は、ぽろりと涙を流すに違いない。しかもトニー・レオンはその時、ぴっちりした白のブリーフ姿なのだ。
 ブリーフ・・・。
 日本の恋愛ドラマ界では、絶滅した衣装である。そこを、敢えてブリーフで見せる、ウォン・カーウァイの冴えた演出。トニーが着ると、ぴっちりブリーフも俄然爽やかに見えてしまうのが、また不思議だ。
 思わず股間に注目しちゃう映画『恋する惑星』。それは私が、オバハンとなった証拠なのか・・・?
 いやそれよりも、白のブリーフ一本で勝負する、爽やかな男、トニー・レオン・・・。今後も熱い視線を注ぎたい、眩しい白さの男である。

8月25日(火)
ということで、ウォン・カーウァイの最新作『ブエノスアイレス』も、当然見た。男同志の恋物語で、もちろんトニー・レオンも出ているのである。これはわかる。だってブリーフ、むちゃくちゃ似合うから。
 ところがトニーの恋人役の男には、どうも納得いかない。だって、西田敏行がシワ取り手術をしたような顔なのだ。
「なんでこんな冴えない男が、トニー様と熱い抱擁を?」
 と思っていたら、こいつは香港の代表的俳優で「レスリー・チャン」とかいう男なのだった。失礼してしまった。知らないということは、大変恐ろしい。きっと、香港のニコラス・ケイジのような存在なのだろう。
「なんであの男が、いつも二枚目?」
 みたいな・・・。しかも二人で、アルゼンチン・タンゴまでネットリ踊るんですぜ。
 まあそれはそれとして、個人的に最近「ゲイ」に物凄く縁があり、嬉しいようなおぞましいような、妙な心持ちだ。というのも先日、夫と行った旅行で、カナダのB&B(西洋版民宿)に泊まったのだが、そこの主人がどう考えても「ゲイ」だったのである。

8月26日(水)
 B&Bのインテリアは荘厳で、朝食のメニューや食器などにも、むちゃくちゃ凝っていた。よって、使われる食器の種類も量も並の数ではない。
 「用意や片付けが大変でしょう」と聞くと「メイドがいるから大丈夫」と主人は言う。しかし5泊の滞在中、私たちは一度もそのメイドなる女性を見たことはなかった。
 そこに住んでいるのは、四〇代前半と思われる主人のカールと、彼よりやや年下らしい「謎の男」の二人。カールには会話の語尾をちょっと上げる癖があり、話し方も物腰もオットリしている。
 ところが同居人の「謎の男」は、愛想はいいが、毛むくじゃらの熊のような手足をした「ムキムキ・マン」であった。名前は知らないが、カールとは全く似ていない。二人に血のつながりがあるとはとても思えなかった。 そのムキムキ・マンはある朝、太い首にネクタイを締め、「バイバーイ」と言って出ていったから、多分勤め人なのだろう。ボンレス・ハムのような腕に、薄いカバンを下げていたのが、不釣り合いだったのを覚えている。カバンが軽すぎ、手を振って歩くとカバンが天まで届きそうだった。
 ある朝、何気なしに見た廊下の本棚で、私は『非公認ゲイ・マニュアル』という本を発見した。フムフムと興味深く中を覗くと、
「貴方が欲望の対象だとわかる、10のサイン」
 とか書いてある。

・サイン1 ジムでトレーニングしている貴方のルーティーンを、いつもさり気なく追う男がいる。
・サイン2 いつも同じ洋服店に行くのに、行くたびに身体のサイズを計られる。
・サイン3 新しい男友達から、付き合っている女性がいるか質問される。
・サイン4 飛行機で男性乗務員から、強い酒を無料でサービスされたり、花屋の店員が花をオマケしてくれたりする。
・サイン5 男友達と二人で映画に行くと、暗闇で友達が「ついうっかり」手を膝の上に置いてくる。
・サイン6 パーティーに誘われて行ってみると、客は全員男だった。

 など、詳しいことが書かれているのだ。私は「ハッ!」とした。
 そういえば初日、カールに、
「あなたたち、姉弟?」
 って聞かれたよな。これは明らかに「サイン3」に類する質問じゃないか?
 これだけではない。ある朝一度だけ、カールがわざわざ部屋に新聞を持ってきてくれたことがあった。受け取った夫が開いてみると、中には全面カラー版で、
「明日は、ゲイ・フェスティバル!」
 と書かれた派手な写真入り広告が。その後数ページにわたり、ゲイの手記だの「燃えるような男求む」だのという個人広告も載っている。これは果して偶然だろうか。
 もう一度、例の本棚に行ってみると、『ボーイズ&ボーイズ』とかいう怪しげな小説もあった。我々の疑いは果てし無く深まり、夫は身に迫る危機に、わななき震えていた。

8月27日(木)
 その後、アメリカのアトランタに行ったら、図らずもそこは全米?2の「ゲイの街」であると聞かされた。
 黒のスリット入りチャイナドレスで、街を闊歩するブロンド美人の男とか、超ショートカットの頭に筋肉モリモリの大工やってる女とか・・・。そんな変な風景を眺めつつ、我々の夏休みは、何事もなく過ぎていったのである。
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