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牛一頭、タケオ伝説の巻

食べたいです!

Pink Tea Time 2009年1月号

牛一頭、タケオ伝説の巻

一月八日
 伝説の大食い男、タケオ君の噂は前から聞いていた。大野家と親類同様であるKさん(東京在住)の次男である。
二十五才、身長一八二?、足は三〇?。
彼の武勇伝は数知れず、青森にも何度も来ているが、私はなぜか会ったことがなかった。
 大野一族にも、実はヒロシという大食いがいた。まだお父様が生きている時に大野家に来て、食卓の寿司五人前を全部平らげ、
「人の家に来て寿司を食べるときは六個までだ!」
 と、お父様に一括されたことのあるヒロシ。しかし、そのヒロシなど歯牙にもかけぬ、馬の胃袋を持つタケオ君が今、青森に来ているという情報をゲットしたのである。
 実は姪の鶴子がめでたく結婚。その披露宴に招待されたのだった。
お母様が、
「明晩、ヒロシと焼肉対決をするらしいから、行ってみたらどうだい。梅子達も行くんだよ」
 と言う。わたしは勇んで焼肉屋「仙人閣」に出掛け、仰天の光景を目撃した…。

一月九日
 まず最初に、梅子様による「タケオ伝説」をお知らせしておこう。
「最初、タケオ君は常人ではないと思ったのは十年ほど前でしょうか…。焼肉屋『一心亭』でのことでした…」 
 と梅子様は回想する。
 梅子様の夫、銀次郎さんは、小欄で常々取り上げているが、「女が結婚したい男?1」と評される男である。大変に甲斐甲斐しい。家族で焼肉屋に行くと、もっぱら肉を焼くのは銀次郎さんで、焼くだけでなく、食べ頃の肉を梅子様の皿に入れてくれるそうだ。
「それに私、肉はさほど食べないので、銀次郎さんが取ってくれた肉を食べていれば充分なんです。でも、その日は違いました…」
 その日、Kさん親子が青森に来るというので、梅子様らは一心亭に招待した。タケオ君と会うのは久々だった。東京からのお客様だから、いつも焼肉は「食べるだけ」の梅子様も、その日は肉を焼く係にまわり、次々に網に上げてご馳走したと言う。
 ところがどうしたことか、焼いても焼いても、一枚も自分の口に入らない。次々と肉が消えていく。おかしい…。
ふと顔を上げると、目の前に座っていた高校生のタケオ君が、焼けた肉を次々と休まずに食べていたと言う。
「その日タケオ君は一人で、牛タンを七人前食べました。勿論その他、カルビやロース等を、たっぷり私達と食べているんです。私は当時、牛一頭分の舌が牛タン一人前だと思っていたので、『この男、牛七頭分の舌を食べたのか…』と仰天し、レジでお金を払いました」
 後日、母親であるKさんが、
「あの日は久々の対面だったから、タケオも遠慮して食べていたのよ」
 と電話で話していたという。それを聞いた銀次郎さんは激怒していたというから、タケオ君が遠慮なしに実力を発揮したとすれば、一体どんな事態になるのか。

一月十日
 その後、梅子様が目撃したのは、つがる地球村レストラン「ライアン」の伝説である。ライアンは美味しい上に、量も多いことで有名な店。あそこで定食一人前を食べるのは、私にはやっとだったと記憶している。
 再びKさん親子が遊びに来るというので、梅子様たちはライアンに招待した。あの店なら量も多く安いから、きっと大丈夫と踏んだのだろう。
さて当日、各自が満腹し、大学生になったタケオ君もハンバーグ定食その他を色々と平らげ、そろそろ勘定をして帰ろうかと思っていると、ウェートレスが再び奧からやって来て、ステーキを何枚も次々と持ってきたという。梅子様は仰天した。
「タケオ君が単品で注文していたんです。そしてペロリと食べてしまったんです。ステーキを、何枚もです!」
 また後日の、居酒屋「五六」伝説。
 Kさん親子含め四、五人で満腹するまで数時間飲んで食べ、そろそろ勘定をして帰ろうかと梅子様が思っていると、居酒屋の奥さんが奧からコンロを持って来て火を付けたそうだ。「どうしたんでしょう。もう帰るのに?」と梅子様が思っていると、奥さんは今度、すき焼きを作り始めたと言うのだ。
「タケオ君がすき焼きを数人前注文していたんです。そしてペロリと食べてしまったんです。その日、奥さんは一人で店をやってました。タケオ君のせいで奥さんはてんてこ舞い。大変忙しそうでした…」
 さらに二年前の年末、「ヒレカツ」伝説。
 Kさんがタケオ君を連れ、青森に帰って来た。その時、東京から豚ヒレ肉の塊を八本送らせたという。なぜわざわざ東京から送らせたのかは知らない。
 とにかく大晦日にKさんはヒレカツを揚げ、タケオ君は豚ヒレ肉塊、四本分を一晩で食べた。ヒロシによれば、タケオ君はヒレカツを、「あたかもポテトチップスのように食べていた」そうである。
 そして梅子様は、再び回想する。
「Kさんが溜息をつきながら言っていました。家で肉ジャガを作っていると、タケオ君は台所に来て、イモが煮える前に肉を全部食べてしまうそうです。出来上がった肉ジャガに、もう肉は入っていない…。つまり出来上がるのは〈ジャガジャガ〉です!」

一月一一日
 さて、焼肉屋「仙人閣」で、私は肉伝説のタケオ君と初めて対面した。全く太っておらず、ごく普通の体型だったのは予想外。しかし確かに伝説通りの食べっぷりであった。
何を何人前などと既に数えられない状態であったが、タケオとヒロシの二人だけで酒は一切飲まず、2万円分は食べたから、約二十人前はあったのではなかろうか。ただ、
「本当はもっと食えるが、皆が帰るので仕方なく自分も帰る。いつもそんな感じ」
とタケオ君は言う。寿司は九十個食べるそうだが、
「米はあまり食べられない。得意分野は肉だ」
 と言っていた。
 そして今日、鶴子の披露宴があった。
 Kさん親子は全員招かれたのに、夫が友人の不幸でドタキャン、空席となった。
ところがタケオ君は自分の席で自分の料理を食べ、その後、隣のテーブルに移動して、欠席した父の分の料理を全部食べていた。
それだけでも充分凄いのに、Kさんは私達にこう言った。
「食べられなかったら、タケオにやってね」
 その言葉通り、天ぷらやステーキをタケオ君に渡すと、全てぱくぱくと食べてしまった。
 暫くして梅子様の息子、大輔が一言。
「茶碗蒸しをタケオ君にあげようとしたら、そんなのいらねぇ! 腹の足しにならねぇからな! と言われた」
「・・・」
 本当に凄い。
「彼は牛一頭食べますよッ」
 と梅子様は言っていたが、それもまんざら嘘ではないと思える今日この頃である。
 
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