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「フネ、明日は出番だぜ!」の巻

賀正
「今年も、よろしく!」って、寝てるだけの由紀夫。


Pink Tea Time 2001年 11月号

「フネ、明日は出番だぜ!」の巻

10月18日
 ボストンから帰ってみると、なんと愛しの野茂英雄様からの「お手紙」が、郵便受けにしずしずと厳かに入っていたのであった。
「うおぉーッ! き、来たーッ! の、の、野茂から手紙がぁッ!」
 その時、私の顔にはフェンウェイ・パークで聞いたアメリカ国歌が、パパパンパンパンパンパーパパッと鳴り響いていたのである。
「うおぉーッ! まさに、ここに、て、手紙がぁッ!」
「・・・手紙じゃなくてサインだけだろッ」
 脇で夫は叫んでいたようであるが、もう私の耳には何も聞こえなくなっていた。
「この封筒を、野茂は掴んだのねッ!」
 野茂の指紋がついていやしないか、舐めるように封筒に顔を近づけ、ひっくり返したり透かしたりして探したが、残念にもそれはない。そして夫が言う通り、本当にサインだけで、後は何一つ書かれていなかった。
 せめて封筒の裏に「メジャーリーガー 野茂」とか、「奪三振王に輝く野茂英雄より愛を込めて」、または「ついでに四球王にもなってしまった野茂英雄より」とか書いてあってもよさそうじゃないかと思ったが、全くの白紙。私が表に書いた「大野妹子 行」という宛名もそのままであった。
「さすが、仏頂面の野茂だわぁ。きれいさっぱりサインだけねぇ」
 と、テレビの印象通りの潔さにますます感心した私だったが、肝心のサインを見て不思議に思わざるを得なかった。

10月19日
「このサインは残念だけど贋物だね」
 と夫。というのもローマ字筆記体サインが、とてもじゃないけど「ヒデオ・ノモ」とは読めず、どう見ても、
「フネ・ニネ」
 としか読めなかったからである。カードにはこんな具合に書いてあった。
「Hune Nine」

10月20日
私 「何なの? フネ・ニネって」
夫 「だから贋物なの! そのサインはダン野村とか誰か別の人が代理で書いたんだよ」
 しかしである。愛想はないが真っ正直な野茂に限って、そんなインチキをするはずがない。私は色々考えた。そして思った。公表はされていないが、きっと「フネ」というのは野茂の愛称、つまりニックネームなのではないかと。
 レッド・ソックスの同僚は皆、外国人。だから「ヒデオ」とうまく発音できないので、野茂を「フネ!」という磯野波平の奥さんのような名で呼び親しんでいるのではないかと…。例えばこんな感じだ。
同僚A「フネ! 明日は出番だぜ!」
同僚B「フネ! フォアボール出すなよ!」
同僚C「フネ! サザエはどこだ!」
野茂「・・・・・・(英語がまだ話せない)」
 そうだ、そうに違いない。私はそれで一つの疑惑が晴れたような感じで、大層スッキリした気分になった。
「やっぱり、このサインは本物なんだ!」
 が、その喜びもつかの間。また一つの疑問がむくむくと頭をもたげてきたではないか。
「じゃあ、“ニネ”って何?」

10月21日
 さて私が同日、いかにして拙著『桃色茶時間』と返信封筒入りファンレターを野茂に届けたかをご紹介したい。
 多くの人は早めに球場に行き、試合前の練習が終わった選手を捕まえてサインをねだるらしい。しかし、それはしたくなかった。
 というのもその時、万一野茂に『桃茶』を渡せても、きっとベンチに忘れて帰るだろうと思ったのである。野茂のことだ。何を忘れてもおかしくない。そこで私は球場内をぐるりと見渡し、「お客様窓口」という看板に目を付けたのである。
 試合途中、レッドソックスの攻撃で席を立ち、その窓口でわめいてみた。
「野茂にプレゼントを渡しに、ニッポンから来ましたぁ!」
 二,三回叫ぶと、相当うるさかったのだろう。脇にいた白髪のおじいちゃんがニコニコ顔で話しかけてきた。この休場では、シルバー人材センターから派遣されたようなおじいちゃんが何人も働いていて、客席誘導とかファンサービスとか、細かい仕事を担当しているのである。再雇用システムがしっかりしているなぁと感心する。
 そのおじいちゃんは「トイレの向こうの赤いドアをノックしてごらん」と優しく教えてくれた。ウルトラ方向音痴の私が、迷い迷いしてそこに着くと、ドアの前には体格の良い警備員が仁王立ちしていた。かなり怖そうであった。それでも、
「野茂にプレゼントを渡したい!」
 と勇気を振り絞って言ってみると、その警備員、
「そういう贈物は通常受け取らない」
 と、素っ気なく言うのである。この男は、私の「八〇セント切手物語」を知らないから、こんな冷たいことが言えるのである(先月参照)。
「お客様窓口の人に、そうしろと言われたんです!」
 本当は違うが、そう食い下がると、警備員は二つ三つ質問して中身を確認し、赤いドアをノック。中から出てきた老人に事情を話し、『桃色茶時間』を渡してくれたのだった。
 
10月22日
「為せば成る!」
 この言葉を実感した。そして思った。
 私がこの「グラフ青森」誌上で、近々「独占! 野茂英雄インタビュー!」という特集を組める日も近いのではないかと。
「妹子が暴く、野茂のやんちゃな素顔!」
「野茂のニックネームは、フネだった!」
 などという副題なんか付くかもしれない。
 後日、梅子お姉様(これまた、超野茂マニア)から一本のビデオテープが届いた。
「妹子達がレッドソックスを見に行った試合、録画しておきました」
 画面の端には帽子を目深に被り、サングラスをした、銀行強盗のような人物が確かに写っていた。日焼けによるシミ・シワ防止のため、白手袋まではめて完全防備した、私の姿であった。
 この白手袋はボストンでは勿論、ニューヨークでもかなり珍しがられたことは特筆に値する。私は外出するとき、シミのない白い手を維持するため、白手袋は欠かさない。それがアメリカ人には大層不気味らしい。 
 ニューヨークの地下鉄でも、皆が一斉に私を見る。視線の先を見ると、ドラキュラ伯爵を見るような怯えた目で、私の手を見ているのであった。
「人種のるつぼと言われるこの街で、これほど注目を集めるのも至難の技だよね」
 と夫は言う。そう言われるにつけ、私の独占野茂インタビューも近いかもしれないと、一人ほくそ笑むのである。


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COMMENTS

あけおめでございます。

今年もお世話になりまする。

明けましておめでとうございます。

こちらこそ、宜しくお願いいたします。

また、こちらに来るときはご連絡下さいませね。

はじめまして

青森にこんなに熱狂的野茂ファンがいらっしゃるとは失礼ながら知りませんでした。
私も青森県出身(正月帰省しているので現在滞在中)の野茂ファンなのでつい嬉しくなってコメントをば。12/31のエントリー分もあわせて楽しく読ませていただきました。

野茂ファン仲間とは!

コメント、有り難う御座います。
お仲間ですね。しかも青森ご出身とは嬉しいです。

よろしければ、「過去のPink Tea Time 1998年8月号」(2008年3月8日付)も合わせてお楽しみ下さいませ。伊良部人形も登場します。

No title

サイト運営し始めた者なんですが、相互リンクしていただきたくて、コメントさせていただきました。
http://hikaku-lin.com/link/register.html
こちらより、相互リンクしていただけると嬉しいです。
まだまだ、未熟なサイトですが、少しずつコンテンツを充実させていきたいと思ってます。
突然、失礼しました。
WAxnz3Hs

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