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神頼みの女、歌に恋する男の巻

サンタ
一年前の由紀夫。ようちえんからの「連絡帳」より。
動物愛護センターのクリスマスドッグダンス(去年)に出たそうです。



Pink Tea Time 2008年12月号

神頼みの女、歌に恋する男の巻

十二月九日
 その時私は、ハッカ味の練り歯磨きを歯ブラシにちょっぴり絞り出し、歯磨きをしながらテレビを見ていた。もう朝ご飯を食べてしまった由紀夫は、名残惜しそうにぺろぺろと、皿の周りの床まで舐めている。
 出勤前のNHKニュース。
 清澄な朝の空気に満ちた、厳かな神社の境内から、男性リポーターが爽やかに言った。
「え~、クリスマスも近づき、こちらの神社では参拝客が連日、長蛇の列を作っています」
私「…?」
 神前結婚を創始したこの都内の神社は、最近「縁結びの神様」として、結婚適齢期を迎えたアラサーに大人気だという。
「アラサー」とは「アラウンドサーティ」の略。三十才前後の女性を指す言葉で、ルーズソックス、茶髪、プリクラといった流行を次々と作り上げたゴギャル世代だそうだ。
 この神社に大挙して押し寄せ、神前に次々と項(うなじ)を垂れるアラサーどもの目的はこうだ。
「クリスマスはぁ~、絶対ぃ~、カレシと過ごしたくてぇ~」
 彼女達は参拝した後、一様に恋愛おみくじを引き、縁結びのお守りを購入する。
 全く、驚天動地の事態である。
 何という安易さ、そして思想の無秩序であろう。クリスマスというキリスト教の祭典を祝う為に、神社に参拝とは!
 これが例えばイスラム諸国であれば、宗教戦争の一つや二つ起こっているのではないか。いや、三島由紀夫がまだ生きていたら、もう一度くらいは切腹するに違いない。
 それにそもそも、ろくに自助努力もせず「神頼み」とはどういうことなのか。長蛇の列に並ぶ暇があったら、他にもっとやることがあるだろうっ! こんな体たらくだから日本の少子高齢化はぁっ…!
 などという種々の思いが頭の中を駆けめぐり、私は歯ブラシを握る手を止めて、ワナワナと激しい憂国の念に苛まれていた。
 私の激怒をよそに、テレビカメラはアラサー達に大人気のお札やお守りを、次々と映し出していた。
私「流行と聞けば、主体性もプライドもなく、飛びつくとは情けなや…。日本は一体どうなっていくのか…」
 脱力しながら歯ブラシを、再びゆっくり動かしつつそう思った。そして映像を目で追っていたが、次の瞬間、ある映像に目が釘付けになったのである。
私「い…?」
 このピンクのお守り、どこかで見たことがある。
 あ、これは、私も持っているお守りではないか? まてよ…。ここは一体、どこなのか?
 気を取り直して、私は食い入るようにニュースを見た。
 東京大神宮。
 ここは今年の黄金週間に上京したとき、河原崎理佳さん、大正なでし子女史(アラサー世代・独身)と共に、三人で参拝してきたばかりである。確かにこの社殿には見覚えがある。

【今年五月某日の会話】
理佳 「妹子さん、東京大神宮が今、都内で大人気らしいですよ。縁結びの御利益がすごいんだそうです」
私 「え、それ、いいじゃん」
なでし子 「わあ~、行くしかないんじゃないですか!」
私 「よ~し! レッツ・ゴー!」
 三人は電車を乗継ぎ、長蛇の列に並んだ。その後、恋愛おみくじを引き、私は大吉(だったと思う)。おみくじは所定の場所に結びつけ、私はピンクのお守りを購入した…。

「ううう~む。東京大神宮だったのか…。あ! 遅刻、遅刻!」
 私はそそくさとうがいをし、顔を洗った。身支度を整え、焦って車に飛び乗ったのである。

一二月十二日
 ところで最近、「コブクロ」という歌手が爆発的に流行っている。大きい男と小さい男の二人組である。男の二人組というと、『あづさ二号』の狩人を思い出すが、狩人には一曲しかヒット曲がないのに比べ、コブクロは次々と連打でヒットを飛ばしている所が、まず決定的に違う点だろう。
 まあ、それはそれとして。
 カラオケに行くと、若い男達がこのコブクロを歌うことが多い。しかも、切々と歌うことが多い。なぜ「切々」かというと、全てが恋の歌だからである。
 最近は、コブクロの『赤い糸』という歌が流行っているらしく、これを先日も若い男が大変に切々と歌いあげたので、隣で聞いていた私は思わず、マイクで、
「考えが、甘いんだよッ!」
 と、合いの手を入れてしまったことがある。本当に無意識にそう叫んでしまうほど、コブクロの歌は甘い。大甘なのである。「赤い糸」など、この世の中の一体どこにあるというのか。あったら私の目の前に出して見せてみろッ! というのが正直な感想である。 
 まあ、それは経験浅い若者であるから仕方がないとして、私が思うのは彼らの実態である。実際に、『赤い糸』を情感たっぷりに歌う若い人々は、恋愛をしたことがあるのかということである。
 コブクロを歌った若い男性の一人、K君(二十代半ば)は、先日、若くて可愛い女の子と同席する機会があり、大層気に入った様子であった。しかし、
「誘ってみればいいじゃない、デートに」
 と応援する私達おばはんに、こう答えたのである。
「やめときます。だって、断わられたら傷つくじゃないですか」
 そしてK君は最近、
「もうすぐクリスマスですね。たった一人です。寂しいです」
 と、連日語っている。それは当然の報いというものである。
 コブクロを歌う若者は、思い切って恋愛に踏み出すことなく、歌うことで「恋愛をしたつもり」になっているのではないのか。そして「恋愛とは、コブクロの歌詞に描かれているような世界なんだ」と思っているのかもしれない。ばかじゃないのか。
 いや、そんな他人のことをどうこう言っている暇は、私にはないのである。
 紙袋に入ったままになっていた東京大神宮のお守り(ピンク)を今、思い出して取り出し、ヒシと握りしめた私であった。
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