スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ものすご~く訛った人々の巻

CIMG2076.jpg
「私は今、由紀夫をたででます」



Pink Tea Time 2001年4月号

ものすご~く訛った人々の巻

3月9日(金)
「歳を取ったらね、何か欲しいなんて欲望はなくなるんだよ。ドケチなんかやめて、欲しい物は今のうち買っておきなさい!」
 と、いつも私に説教するお母様。
「私はもう何見ても欲しくないから、人生つまらなくってねぇ・・・」
 というセリフも何度か聞いたことがある。
 そんなある日、大野一族で東京に行くことになった。夫も誘ったが、なぜか控え目に辞退するので、私達ウワサの美人三姉妹+お母様という「若草物語」的四人組。それに忘れてならないのが梅子様の夫、銀次郎氏の合計五人連れである。
 銀次郎氏は、大野家でただひとり「常識を持ち合わせた人間」と言われている冷静沈着な人物。そして不器用な梅子様に代わって裁縫も食器洗いも見事にこなすという「今、結婚したい男ランキング?1」間違いなしの男だ。
 青森空港で待ち合わせをすると、お母様は毛皮のモッコリしたど派手コートで、ヒグマのように登場するのである。
「まぁお母様。何も欲しいものはないって言ってませんでした?」
「なんの、なんの。これは十何年も前に買ったんだよ」
 と、私の言葉を遮る手には、ゴロリと大粒のダイヤモンドがギラッ! 確かにこの指輪も買ったのは五、六年前だが、隣の梅子お姉様も見慣れぬ高そうな毛皮をしている。 
「これ? このあいだ、お母様に買って頂いたマフラーよ。このバックもよッ」
 手には某ブランドの大型バック。
「東京は大寒波なんだよ。お前もこれをしなさいッ!」
 と、お母様がそのバックから、私のために取り出したのは、別のゴージャスな毛皮のマフラーではないか。欲しいものは何もないどころか、年々強欲になっているように思えるのは気のせいなのか? 
 お母様は銀座の宝石店でも、
「ゴロッと大きいダイヤが欲しいねぇ。ふふふ」
 と、帰ってきたシャケを狙うヒグマのように、じっとショーケースを見ていたよな。
「言ってる事とやってることが違い過ぎると思うんだけど」
 と言う私に、
「お母様は、まだ歳を取ってないってことじゃないの?」
 と松子様。うーむ、なるほどと納得してしまったが、するとお母様は、あと何年くらい若いままで買い物をするのであろうか。

3月10日(土)
 我々はモノレールの中で、べちゃくちゃと津軽弁でおしゃべりをする。私は日本中、いや世界中どこへ行っても津軽弁で通す人間である。東京だろうがニューヨークだろうが、電車だろうがフレンチ・レストランだろうが、全くお構いなく、ネイティブな津軽弁を流暢にしゃべりまくるのだ。
 ニューヨーク在住の友人の会社に電話したときも、津軽弁だった(日本企業のニューヨーク支店なので、電話に出たのは日本人)。
 友人は留守だったので伝言を頼んだ。すると帰社した友人は、
「なんだか、すごーく訛っている人から電話があったよ」
 と同僚に言われたそうだ。それで彼女はすぐ、私からの電話だと分かったという。
 「すごーく」訛ってて、全く悪かったよ。

3月11日(日)
 話を戻そう。
 モノレールの中で、最近行われた県立高校入試の問題が話題にのぼった。
 私  「『方言について書け』っていう作文が出たんだって」
 お母様「でも最近の子供は『カッチャ』と『アッペ』の違いも分からないよねぇ」
 私  「へ? 『アッペ』って何? 『カッチャ』は裏返しってことでしょ」
 松子様「いやだぁ。『アッペ』は方向が逆ってことッ。『ちょっと、その携帯電話、アッペに持ってない?』っていうでしょ」
 梅子様「さすがでございますわぁ、松子お姉様。我々とは年代が違いますわね」
 私  「じゃ『昨日ユニバースに行がさった』の『行がさる』は、標準語で何て言うわけ?」 
 お母様「難しいねぇ。『たまたまユニバースに行った』ってとこかねぇ」
 私  「『~さる』って自発の助動詞じゃない? 『自然に、またはひとりでにそうなる意を表す』自発ってやつ」
 梅子様「『思われる』の『れる』と同じってこと?」
 松子様「いやだ~。何処に『ひとりでにユニバースに行く』バカがいるのよ」
 私  「うーむ。そう言われると」
 梅子様「『家で犬をたでる』っていうのも津軽弁でしょ」
 お母様「ああ。『飼う』って意味ね」
 私  「うーん。犬を『立でる』・・・」
 松子様「そう言えば私、かわいい兎をたでたいなぁって最近思ってるわけ」
 梅子様「今は金魚しか、たででないものね」
 私  「うーむ。金魚も『立でる』・・」
 銀次郎氏「・・・・・・・」
 銀次郎氏はまるで他人のフリで、一人離れて座っている。私達の会話に加わりたくないのか、車中ではいつも離れているのである。 そして電車を降りると、我々「若草物語」は銀次郎氏の後を、ゾロリついていく。我々は才色兼備で高名な姉妹であるが、なぜか全員、ものすごい方向音痴なのだ。
 そして一人スタスタと歩いていく銀次郎氏の後を、ネイティブな津軽弁を流暢に操りながら歩く、私達「若草物語」。当然遅れがちなわけで、ハッと気付くと銀次郎氏の姿はなく、慌てふためいたこと数知れず。
「大変ッ! 銀次郎さんが消えたわよッ!」「エッ?」
「逃げられた?」
 というやりとりが何度繰り返されたことであろうか。
 考えればうちの夫、多分こんな目に会うだろうと予想し、同行を辞退したのだろう。
 きっと今頃はまた、ユニバースの半額セールに、行がさっているのではないか。そしてバクバクとエビチリやメンチカツを買わさっているのではなかろうか。
 夜八時半になると、まさに夫は「自然に、またはひとりでに」ユニバースに登場する男なのである。
スポンサーサイト

COMMENTS

COMMENT FORM

TRACKBACK


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。