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憧れ続けた聖地、ブエノスアイレスの巻

なにか? 
私の好みのトニー・レオンとは、ほど遠い顔の由紀夫。




Pink Tea Time 2001年2月号

憧れ続けた聖地、ブエノスアイレスの巻

1月6日
 アルゼンチンの首都、ブエノスアイレス。
二年前、香港映画『ブエノスアイレス』を見た時から、私の憧れの地であった。 この映画は香港の大スター、トニー・レオンとレスリー・チャンの「ホモ物語」である。
 どうしたことか、私は「ホモ映画」をよく見る。「ホモ映画大好き人間」と言ってもいいだろう。
「君、どこか変なんじゃない?」
 と、よく夫から言われるが、実に心外だ。面白いものは面白いのである。
 誤解のないようにお願いしたいが、私はゲイではない。それどころか、「レズ」の映画は気持ち悪くて大嫌いだ。なのに、ホモ・ゲイ・オカマと聞くと私は大層うれしい。ついついホモ映画情報を次々と集めるクセがあるのである。自分でも釈然としないが、これは一体どういった心理なのか?
 それにしても私が、傑作『ブエノスアイレス』を話題にしても、だれも同調しないという点も納得いかない。
「感動して連続二回見た」と言うと、大抵の男は頭を抱えるか、首を傾げるかのどちらかだし、女でも「ふーん」という程度の冷たい反応。レスリー・チャンのファンである梅子姉様でさえ、
「気持ち悪くて、よく見てなかった」
 と言う。夫も「鳥肌が立つ」と言っていたよな。
 この映画に感動する層は「ゲイ」なのか? じゃあ私は何なんだ? と、度々不安に襲われるのは事実であった。

1月7日
 ということで、映画の好みは絶対に相いれない私達夫婦。が、アルゼンチン旅行という点で、奇蹟的に意見は一致していた。
 私は映画のロケ地を探訪する、「世界遺産マニア」の夫は、イグアスの滝を見るという目的である。イグアスの滝は、偶然にも映画のクライマックスに登場する場所。私には好都合であった。
 二年間、憧れ続けた聖地ブエノスアイレスである。私の心は期待に脹らみ、今にもプッチンと張り裂けそうだったと言っていい。
準備は万全だった。ロケ地を確認するため、映画をまたまた四、五回は見返す。 さらに、アルゼンチン・タンゴのCDを三枚購入した。
 映画では、トニーとレスリーが男同志で、ねっとりとタンゴを踊るシーンが何度も登場する。これがまた、大層いいのである。ホモ・ムード満点なのである。あー、私も踊ってみたいぃと切に思ったものだ。
 が、私は盆踊りも出来ないのである。
 大昔のこと。初めて参加した町内の盆踊り講習会で、「あなたの手付き、ロボットみたいねぇ」
 と、潰れたパーマのオバサンに言われたことがあったよな。以来私は深く傷つき、盆踊りの第一線を退いたという過去がある。
 ところが最近、実に滑らかな腰つきで盆踊りを踊るロボットをテレビで見たのだ。記憶力で機械に及ばないのは分かっていたが、盆踊りでさえロボットに負けてしまうとは・・・。屈辱的な出来事であった。
 とにかく踊りはダメなので、とりあえず音楽で攻めてみることに。
 アルゼンチン・タンゴと言えば、アストル・ピアソラだろう。よくは知らないが、彼はタンゴに革命を起こした伝説の作曲家らしい。
その曲はすさまじくドラマチックである。情熱がぼうぼうと音をたてて、燃えている感じである。いや、情熱が滝のように、止めどなく落下しているとでも言おうか・・・(うーん。文章表現まで、私をドラマな女にしているようだぜ)。 
 私は「伝説のCD」を早速購入。朝から晩まで一週間聞き続け、心の中ではもうすっかり、燃えたぎるタンゴ女となって、成田を出発した。
 折しも南半球、アルゼンチンは真夏であった・・・。

1月8日
 が、運命はいたずらだった。最初の三日間、イグアスの滝観光までは完璧だったのだ。
 ドラマチックにどうどうと落下する「悪魔の喉ぶえ」と呼ばれる巨大な滝を、あらゆる角度から鑑賞し、驚き、ため息を洩らした私達。頭の中には滝の轟音と共に、常にピアソラのミュージックが渦巻いていた。
 ついでに約一リットルで一ドルという地ビールも、ドラマチックにどうどうと飲み、
「あー旨い!」
「うーん、安いッ」
 と真夏のアルゼンチンを満喫。
 もちろんこのビールも映画の中で、トニー・レオンが飲んでいたものだ。小道具、BGM共、演出に抜かりはなかった。
 往復の飛行機に勤務していた客室乗務員(アメリカ人・男)も、「ホモ映画探訪の旅」にぴったりだったよな。
 外国の航空会社でも、日本発着便には日本語を話す乗務員がいるのが通例。その乗務員は数年間、日本で暮らしていたそうだが、純粋なアメリカ人のためか、実に奇妙な「オカマ日本語」を話す男であった。
「皆様」という呼び掛けも、
「え~、みなしゃまあ~~ぁ」
 という、ナヨナヨと気の抜けた話し方。機内放送の一発目から乗客を脱力させていた。
「お化粧室」「おコーヒー」と何にでも「お」を付ける。その上、
「みなしゃまあ~、お待たせいたしまスた」 と、えれぇ訛っているのだ。しかも、
「間もなくこの飛行機は、JFK空港に着陸いたします」
 と言うべきところを、
「みなしゃまあ~、間もなくJFK空港に〈ちょくらく〉いたしますッ!」
 と恐ろしいことを言うではないか。オカマ語に脱力していた乗客も、このまま地面に「直に落下」するのか? と、急にピンッ!と背筋を伸ばし、緊張したようである。
 幸い、飛行機は無事だった。
 しかし聖地ブエノスアイレスで、大きな不幸が私を襲うことなど、この時は知るよしもなかったのである・・・。   (つづく)


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