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運命の出会いを待つ男の巻

よだれかけ  また、コスプレをしてみた由紀夫。


Pink Tea Time 2000年 12月号

運命の出会いを待つ男の巻

11月27日(月)
「僕はね、運命的な出会いを待っているんですよ。もう一年以上もね・・・」
 しっとり告白する同僚のキムラ君。
 キムラ君が気楽な独身貴族と呼ばれて早20年。「お前、いつ結婚するんだぁ?」など、もう誰にも言われなくなっちゃったキムラ君の胸に、そんな固い決心があったとは、迂闊にも知らなかった私である。
 話し続けるキムラ君。
「例えばある晩、いつもどおりに帰宅する。玄関を開けようとした僕の耳に、突如、
 『にゃあぁーん』
 という可愛らしい鳴き声が・・・。ふと見ると、おや、軒下で震えている迷い猫。
 『おーおー可愛そうに。こっちにおいで』 と僕が誘うと、猫はヨロヨロ立ち上がり、玄関の中へ・・・。パタンと後ろ手にドアを閉める僕。もう、この子猫ちゃんは僕のものだよ。ふふふ・・・・・。こんな運命的出会いをね」
「・・・・・・・・ 。」
 そう語るキムラ君は、もうすっかり自分の世界に入っており、周囲の誰をも寄せつけない猟奇的な目をしていた。
 愛猫を病気で亡くしてから一年あまり。無類の猫好きで知られるキムラ君は、それ以来、猫なしの生活を送っていたのであった。
 そして、それは信じられないことであった。というのは、彼は他人にも一目で分かる、実にわかりやすい猫マニアだったからだ。
 例えば職場の机上には「月めくり猫カレンダー」と陶器製の猫の置物、猫の写真立て、ノートにはハローキティのシール。ちょっとのけぞってしまうのは、パソコン・キーのフラットポイントに貼られた猫のシールであった。 「フラットポイント」とは、キーボードの下中央にある長方形に窪んだ部分である。マウスと同じ働きをするが、マウスはカチッと指で押すのに対し、フラットポイントは指でコロコロなぞるという方法を取る。
 そこには、気持ち良さげに目を細め、お腹をふぎゃあと出し、弓なりに寝ている猫写真のシールが貼られている。まるで、ネコ界のマリリン・モンローだ。で、キムラ君がパソコンを操作すると、まさに猫のおなかを指でコロコロとさする形になるのであった。
 見ている方は大変、気持ちが悪い。
 そんなキムラ君が、一年以上も猫なしだったとは、まるでうちの夫が「ユニバ-スの半額シールなし」で暮らしていたようで、よく我満していたなぁと、驚く以外ないのであった。

11月28日(火)
 なんたって、猫を亡くして間もなくの頃、「僕ぁもう、寂しくって寂しくって・・・。昨日はジャスコの『ラブリー・ペット大集合展』に行っちゃいましたよ」
 とキムラ君は言っていたからね。
「そしたら昨夜、死んだニャンコちゃんが夢に出てきちゃって・・・」
 とガックリうなだれていると、妻子持ちのナカタ君に檄を飛ばされていたよな。
「お前なぁ、夢に出てくるのが死んだ猫だなんて、そんな生活でいいのかッ?」
 全くその通りだとは思ったものの、もしかしてキムラ君はホモかもしれない。可哀相なので私はフォローしてあげたのだった。
「今の時代はさぁ、別に結婚しなくたっていいのよ。・・・でも確かに男の独身は孤独で不幸かもね。一人で子供は生めないし」
 フォローしたつもりが、ますます彼をドツボに落としめるようなことを言ってしまった私であった。
 ところがである。意外にもキムラ君は、急に背中をピンッと伸ばし、強気なことを言うではないか。
「いや妹子さん。今は男も出産できる時代なんですよ!」
「ウッソー! どうやって?」
「本当です。大腸に受精卵を着床させて、帝王切開で生むらしいです」
「テーオーを、セッカイ?」
 私には、摩訶不思議な話に思えた。だって男が「テーオー」を切開するなどできるものであろうか。女だからこそ、切開すべき「帝王」が、下半身のあそこに存在するのではないのか? と思ったからである。
 そこで、すかさず私は切り返した。
「男のテーオーって、一体どこにあるのよ」
「えッ?」(キムラ君)
「えッ?」(ナカタ君)
「どこなのよッ!」
「・・・・・。」(キムラ君)
「・・・・・。」(ナカタ君)
 そして驚きの真実が明かされたのだった。 それまでの私は、女性の局所を「帝王」と言うのだと信じ、疑っていなかった。ところがそれは、大きな間違いだったのである。
 「帝王」とはローマ帝国の「ジュリアス・シーザー」のことだったのだ。シーザーが母の難産ゆえに切開手術で生まれたことから、
「切開出産」をこう呼ぶようになったという。
 そうであったのか・・・。
 以前、夫が飲み会に行くとき、
「今日の飲みは、パッカスビルだよ」
 と言って出掛けたという「パッカス事件」をネタにしたことがあったが、それをせせら笑う権利が私にあっただろうか。
 とんでもないところで恥をかいたものだ。人間、何があるかわからない。こうなるとキムラ君も、いつ妊娠しないとも限らないではないか。そう思うと、なお一層謙虚を心掛けようと誓いを新たにした私であった。

11月29日(水)
 その誓いとは全く関係ないが、週末、島根県の出雲大社に行ってきた。
 有給休暇も合わせた3泊4日の旅。荘厳な大社造りの前で、ゆゆしく信仰心を起こした我々夫婦であったが、いつものドケチ精神は忘れようがなかった。
 まず、チャリーンと夫が投げた御賽銭。
 「いくら投げたと思う?」と聞くので「あなたのことだから五円でしょ?」と言うと、「残念でした。一円です。財布に百一円しか入っていなかったの。おみくじが一枚50円だから、二人で百円は使うだろ」
「・・・・・・・」
 飛行機は、貯めたマイレージで貰った航空券なので、タダ。ホテルも朝食付スイートルーム、二人一泊二万円の激安プランだ。レギュラーコーヒーはスーパーで、使い捨ての紙ドリッパー式(一杯分50円)を買い、部屋で飲む。缶ジュースも買わない。家から持参したペットボトルに水を入れ換えて持ち歩き、豪華なわりに低予算の4日間であった。
 帰宅後、持ち帰った緑茶ティーバック(ホテルに無料で置いてある)には日付を入れてストック。以前の旅行でゲットしたものと区別するためである。
「こんなドケチで、いいのだろうか」
 一抹の疑念を、ふと抱いた私。それでも、
「賽銭一円の夫には負けるよな」
 とすぐ納得できるところが我ながら凄いと思う、初冬の午後であった。
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