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貯金の王道の巻

CIMG1802.jpg 由紀夫 「ポン太さんの餌、食べていい?」
ポン太 「駄目」



Pink Tea Time 2000年5月号

貯金の王道の巻

5月3日(水)憲法記念日
 眩しい朝の光にゆったりと新聞を広げた私は、次の瞬間、打ちのめされていた。
「ゲゲゲッッ!」
 昨日購入したばかりの熱帯魚が、なんと今日から、特売品になっているではないか。一匹六八〇円もしたのに、今日から破格の二九八円にッ! 
 やられた・・・。
 巷はゴールデン・ウィーク真っ盛り。家族サービスに勤しむ、子連れのオヤジを狙っているのだろう。
 オヤジ達は幸せだろうが、私はたった一日で三八二円の大損。消費税も入れると、なんと四〇一円の損失だ。実に、晩飯が一回食える金額ではないか。
「君ってさ、いつも買い物のタイミングが悪いよね」
 と、パジャマで冷蔵庫にもたれ、牛乳を飲む夫。
 右手に持つ牛乳パックには「30%引」の赤シール。そして左手には昨夜、閉店直前に買ったレーズンパンを握っているが、袋には「半額」の赤シールが燦然と輝いていた。
「だから言ってるだろ。商品ってのはね、連休明けが安いの」
 と、得意気に夫は半額のパンを食らう。
「連休は客を当て込んで、大量に仕入れるからね。そして余る。休み明けにはそれが値引きされるってわけさ」
「くッ・・・・・!」
 私は二、三年前のことを思い出していた。 あれは、雪が降って間もなくの頃だったろう。私が「革張りのソファが欲しい」と言ったら、夫はこう言ったよな。
「まあ、待てって。年末にかけて物価は上がるんだ。買うなら正月明けだよ」
 そして正月が明けた頃は、こう言った。
「家具ってのはね、年度末は高いんだ。引っ越しや入学式が近いだろ」
 四月に入ると、こうも言ったっけ。
「やっぱり買うなら桜祭りの後でしょ。連休明けの、物が余った時を狙うのが、賢い消費者だね」
「・・・・・・・・」
 結局私たちが革張りのソファを買うことはなかった。東奥日報の「譲って」欄に手紙を出し、他人から安く中古を譲ってもらったのである。
 確かに革張りだったが、色は相当褪せていた。
「あなたのやり方じゃ、永久に買い物が出来ないじゃないのよッ」
 すると、したり顔の夫は言うのである。
「そうそう、そうだよッ。そうやって時間をかけて考えて、考えて、結局買わない。これが貯金の王道だね」
「・・・・・・・・」
 夫の同僚には、毎日ジャージの上下を着て来る人がいるという。ネクタイ通勤を奨励する上司は、渋い顔。でも、結構仕事が出来る男なので、黙認されてるらしい。
 しかもその男、ジャージももったいないからと、ジャージの上に、さらに白衣を着ているんだとか。この男も、貯金の王道を歩んでいると言っていいよな。
 類は友を呼ぶ。こういう一連のドケチが一所に集合し、お互いに影響し合って、研鑽を積んでいるに違いない。
 ああ、恐ろしいことだ。ひょっとして夫の職場では、忘・新年会に「ドケチ選手権」なんかをやっているのではないか?

5月14日(日)母の日
 母の日である。
 私は親孝行な娘なので、母の日・父の日の花は、まず欠かしたことがない。いつもアレンジ・フラワーの配達を頼むのだ。
 去年の父の日は、まだ生きていたお父様に、「ケンタッキーを食べすぎないでね」のカードを添えて贈ったものだった。すると、もうボケていたお父様だったが、
「それだけは無理なのじゃ・・・」
 と、独りごちていたという。
 ああ懐かしい・・・と、セピア色の思い出に浸っていると、梅子お姉様から電話が。
「妹子さんッ。大輔から電報がきたんですのよッ。なんと『オカアサン、アリガトウ』ですって。オッホホホ・・・・」
 大輔とは梅子お姉様の一人息子だ。この春、埼玉の大学に合格。なんでも「心理学を学ぶんだ」とかで、初めて親元を離れ、現在アパートで一人暮らしをしている。
 そして先日、大輔に初めてケータイを持たせたという話もしていたっけ・・・。

5月15日(月)
「今日で連続三日、電話してないんですの」 そう梅子様が話していたのは、一週間ほど前のことだった。
 大輔が上京して一月余り。梅子様は毎晩、大輔のケータイに電話をかけ続けているというのだ。
 梅子様「今、どこにいるの?」
 大輔 「アパート」
 梅子様「今晩、何食べたの?」
 大輔 「とりあえず、コンビニ弁当」
 梅子様「今は、どこなの?」
 大輔 「新入生歓迎コンパ」
 梅子様「まあ、何飲んでるわけ?」
 大輔 「とりあえず、牛乳」
 とかいうくだらない親子の会話を、もう一ヵ月以上も、毎晩続けているというからすごい。電話会社も儲けるはずだ。
 ところが、あまりしつこくして大輔に嫌われたら困ると思い、この三日間、我慢しているんだという。「そりゃ当たり前だろッ!」と、私が内心思っていると、
「でもね、夕べはお父さんに電話させたんですのよ。私がせきたててね。ホホホ・・・」
「・・・・・・・・・」
 驚きの親子である。こんな母親に「アリガトウ」などと、息子が電報打つか?
 とはいえ、大輔は近年稀に見る「真面目息子」なのであった。何をするにも親の許可をもらうという、実に礼儀正しい男。
 あれは四年前、大輔が中学の頃だった。映画『セブン』を見に行きたいと、
「『セブン』見ていい?」
 と父親に聞いた。すると父は、
「『ウルトラ・セブン』か?」
 と答えていたそうだ。
 月日は流れ、高校三年になった大輔だが、「オニギリ食べていい?」
 と、オニギリ一つ食うにも、親の許可をもらっていたという。しかも夜、梅子様がグッスリ寝ていても、わざわざ起こして聞くというからすごい。礼儀正しすぎる。
 今、埼玉で一人、大輔はオニギリを食う時、誰に許可をもらっているのか。隣のおばさんか? 
 自炊するというので、私は合格祝いに檜のまな板とヘンケルの包丁を贈った。しかし梅子様の電話攻撃に、「とりあえず、コンビニ弁当」と一月答え続けている大輔・・・。
 大物である。是非大学で、自分の親子関係の「異常心理」を解明してほしい。そう思う今日この頃だ。
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