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度重なる災い、一体私が何を・・・の巻

CIMG0983.jpgコイツのイビキもかなりひどい由紀夫。



Pink Tea Time 2000年2月号

1月27日(木)
因果はめぐる糸車。積善の家に余慶あり。人生楽ありゃ苦もあるさ、など人は言う。
 思えば去年の3月。家の階段からゴロッ!と転げ落ち、グギッ!と捻挫してギブス姿を披露したのは、一年前のことだった。
 その一ヵ月前には夫が病に倒れ、入院。私は健気に付添い、看病したので、例の階段落ちも看護疲れが原因だったかもしれない。
 11月には、不死身だったお父様がポクッ!と死亡。
 そして今、私は骨折で入院中である。
 スキー場で華麗な滑りを見せていた私に、スノーボード男がバギッ!と後方から激突。その後、男は逃走・・・。
 この度重なる災い。一体、私が何をしたと言うのであろうか。

1月28日(金)
「でも、どうするの? あなたのゴジラ・イビキ」 
 入院が決まって、夫が言う。
「ゲゲッ! そうだった・・・」
「常人じゃあ、寝られないと思うなぁ」
 夫によると、私のイビキは人間技とは思われないそうだ。
 明け方、「ゴゴゴゴォーー!」という轟音がするので、除雪のブルトーザーかと思ったが、季節は秋・・・。では地震か? 地鳴りか? と飛び起きたら、音源は隣でヨダレを流す私であったという話は、夫から何度か聞かされていた。
 しかし、そんなことを言われても、俄には信じがたい。自分では聞いたことがないのだから、これは夫が私の浮気を恐れての陰謀かも知れぬ。自分がゴジラ・イビキをかくとなると、そうそう他の男とラブ・アフェアという訳にもいかないからね。
 それに「広末涼子の姉」と世間も認める私だ。そんな楚々としたヒロスエ顔の私が、どうして「除雪ブル」や「地鳴り」の如きイビキがかけようか?

1月29日(土)
 これが、「イビキ六段」と恐れられるお母様なら話は違うね。だってお母様は、しばしば自分の強烈な一発で、ハッ!と目を覚ましているのだ。自らを驚かすイビキだから、これは認めるしかないだろう。
 それでもよく、亡くなったお父様とイビキのなすり付け合いをしていたよな。
 実は、お父様もメガトン級のイビキの持ち主であった。夜毎、二人のイビキ共演は凄まじいもので、自分のイビキで目が覚めたのに、相手のことを「うるさいッ!」と叱りつけ、またグウと寝るという醜い争いをしたものである。
 それを隣の勉強部屋で、宿題をしつつ聞いて育った私は、
「自分のイビキくらい、潔く認めろッ」
 と情けなく思ったものだったが・・。
 いや、そんなセピア色の思い出に浸っている暇はなかったのである。
 私の病室は二人部屋で、70才ほどの上品なご婦人、ハヤシさんと同室になった。
「私、もう年なので、夜中に何回もトイレに起きるの。うるさくてご迷惑をかけるわ」
 とハヤシさん。私は恐縮して言った。
「それが、そのぅ。私はこう見えて、ゴジラ・イビキをかくらしいんです」
「まあ、イビキくらい・・・。うちの夫で慣れてますよ。大丈夫、大丈夫。ホホホ」
「そうですかぁ。ホホホ」
そしてその夜、ハヤシさんの隠された強者ぶりが判明しようとは、さすがの私も予想だにしていなかった・・・。

1月30日(日)
「あにょッ! はにむにゅかッ!」
「!?」
 突然のハングル語のような声で、私はガバと目覚めた。「何事か?」と思えば、隣のハヤシさんが、まるで日常会話のような明快さで、深夜、独り言を言っているのである。明快ではあるが、意味不明であった。
 ハヤシさんは「寝言五段」であったのだ。 長い寝言にはイビキも混じっており、
「むにゅ・・・ガガガ・・んガッ!」 と、途中で「ガ行変格活用」が入ったりする。しばらく私は寝られなかった。
 翌朝の二人。
「妹子さんのイビキ、なんでもなかったわ。少し大きな寝息ってとこかしら。私の方こそトイレに立ってうるさくなかった?」
「い、いいえ。トイレは気づきませんでした・・・」
 まさか「あなたは寝言五段ですね」とは言えないまま夕方になり、仕事帰りの夫が、バタバタと病室に入ってきた。
「んもう、忙しくてバナナも食ってないよ。台所に黒いものがあるからさ、なんだろと思ったら、バナナが腐ってるわけ。それも2本も」
 あくまでバナナに固執する男である。
 食物を大事にするあまり、バナナを食べる順序まで私に指定していた男、夫。その夫が腐らせるほどだから、よほど多忙なのだろう。いっそ、忙しさの程度を「バナナ」という単位で計ってみたらどうか。一本腐らせたら「忙しさ=1バナナ」。二本腐らせたら「2バナナ」というふうに。
   
1月31日(月)
 そして翌朝。
「妹子さんッ! あなたのイビキ、夕べ凄かったわよぅ。宿直の看護婦さんもやって来たくらい。まだ若いのにねぇ・・・」
 ハヤシさんによれば、私のイビキは「ゴジラ」の名に恥じない破壊力で、しかも小一時間も続いたという。 
 実に無念であった。こんな形でイビキの実力が証明されようとは・・・。しかも、驚くべきは持続力である。
 ハヤシさんの高イビキも相当だが、さほど長続きはしない。「ガガガ・・」というやや低い助走が続いた後、一発「んガッ!」という大音量を出して小休止となる。
 ところが私の場合、「んガッ!」というクライマックスが「ゴゴゴーン!」という重低音を伴い、約一時間も続くとは、何としたことか。鼻の粘膜が、よほど強靱なのだろうか。
 こんなこと、私の楚々とした容貌からは誰も想像しないだろう。我ながら、そのポテンシャル・エネルギーに畏怖を覚えてしまう。
 夫に言うと、「言った通りだろ」と得意顔。
百円ショップで「イビキ防止用鼻栓」を買ってくると言うが、それを鼻に装着した寝顔というのも、すこぶるマヌケであろう。
 看護婦さんの反応が、気になるところである。
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