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「あなたが青森のヒロスエさんですね」の巻

枕
今日も、私の脚を枕にする由紀夫。



Pink Tea Time 1999年7月号

6月27日(日)
「広末涼子の姉」
これが私のニックネームである。二年ほど前についたものだ。
 ある席で会った男性Sさんが言いだしたことから始まった。最初は、
「やだ。Sさんッたら、お上手ぅ」
 などとかわしていた。ところがその後も4、5人に言われたから、私が広末涼子に似てるのは、ほぼ客観的事実なのだろう。
 夫に言ったら、
「目が悪いんじゃない?」
 で片づけられた。向かいに座る同僚は、
「アハハ・・・」
 と笑って済ませたし、隣の同僚は、
「う、うーん」
 と言ったきり何処かへ消えてしまった。皆恥ずかしがり屋さんばかりなのだろう。
 何を隠そう、私はあの俳優・西村雅彦さんにも「ヒロスエの姉」で通っているのである。去年「あおもり映画祭」に西村さんがゲストで来た時、そう紹介されたのだ。その後、映画祭の代表幹事に、「ヒロスエ姉、元気ですか?」と電話で言ったという話もある。
 更に今年のゲスト鶴見辰吾さんにも、
「あなたが青森のヒロスエさんですね」
 と言われた。もうこのニックネームは、全国的に認知されたと言えるかもしれない。

6月28日(月)
 そしてある朝、私は仰天した。
 起きて新聞のテレビ欄を広げたら、私と三上博史の写真が載っているではないか。私は赤のワンピースを着ている。いつこんな写真を撮ったのか、全く記憶がない。
 ところがよく見たら、それはヒロスエ主演の新ドラマ『リップスティック』の宣伝写真であった。その角度のヒロスエが私にそっくりである。いや、まさにこれは私。輪廻転生というやつではないか?
 特に鼻の線。私とヒロスエの決定的違いと言えば、目の大小ぐらいだろう。その写真の顔は下向きなので、ほとんど目が写っていないのである。
「ちょっと大変ッ! 私が三上博史と写ってるのよッ」 
 と、息を荒げて夫に見せたのであるが、
「キミ、そろそろ老眼じゃないの?」
 と一笑に付される始末。本当に皆、どうして事実を認めないのであろうか。
 そして先日、松子・梅子両お姉様と東京へ行った時にも、その事実は証明された。有名な「ゆりかもめ」という乗物に乗り、フジテレビ新本社の観光に出掛けた時のことだ。
 フジ社屋には自社制作ドラマのポスターが、たくさん飾ってあった。そして幅2mはあるかと思われる太い柱の側面に、例の『リップスティック』の巨大なスチール写真が、ドドオーンと掲げられていたのだ。
 私は小躍りして喜んだ。鼻穴を広げて写真に駆け寄り、私の顔と巨大なヒロスエを順番に指して見せると、お姉様たちも「オオッ!」と驚いた様子。「似てる似てる!」ということで一同の意見はまとまっていた。
 こうなるとヒロスエが身内のように思えてくる。なんでもせっかくの早稲田大学に行ってないようだ。いかん。注意しとかなくちゃ。
 そして高倉健と共演した映画『鉄道員(ぽっぽや)』。早速これもチェックしに、私はいそいそと出掛けて行った。

6月29日(火)
 泣けたねぇ・・・。泣けましたよ。『鉄道員』!
 「ハンカチご持参下さい」と映画広告に書いていたが、ハンカチどころかバスタオルだろう。私はもう、高倉健が雪のホームに立つオープニングから泣いていた。
 ただ立っているだけで客を泣かせる男・・・。そんなドラマな男は、日本広しと言えど滅多にいない。多分この「俳優・高倉健」と「ピッチャー・野茂英雄」くらいだろう。

6月30日(水)
 野茂の試合は本当に泣ける。野茂が広い背中を見せてマウンドに立つだけで、日本人にはググッと熱いものがこみ上げてくるのだ。 そして野茂は投げるとき、バッターにまで背中を見せている。世界一、背中で勝負する男と言えよう。
 一方、野茂を見てると相当イラつくのも事実だよな。いつもは内気でおとなしい私も、ついつい叫んでしまうくらいだ。
「オイオイ、またフォア・ボールかぁ?」
「おらおらバッター! ファールばっかり打つんじゃねえッ! 野茂が疲れるだろッ」
「ったく、ストライク投げられるなら最初から投げろッ!」
 そして隣で、いつも夫は呟く。
「キミ、うるさいよ」

7月1日(木)
とにかく『鉄道員』も泣ける。
 高倉健がピーッと笛を吹くだけで泣ける。子役の女の子が出てくると、また泣ける。そして我が妹・ヒロスエが料理を作るというクライマックスでは、まるで涙がイグアスの滝のようにドドーッと溢れてくるのだ。
 今こうして感想文を書いていても、ワープロの文字が涙で霞んで見えない。
 なんと言っても、高倉健の役名が泣ける。「佐藤乙松(おとまつ)」だ。「おそ松」じゃなくて「おとまつ」。このお茶目な名前さえ健さんなら許せる。そして妙な哀愁さえ漂わせるから、本当に不思議なのだ。
 私はドロドロに泣き疲れ、映画の途中でアンパンを四つ食べて栄養補給をした。朝、実家を出る時に、「おやつじじい」のお父様から分けてもらったものであった。
 アンパン四つの前に、チーズサンドも二切れ食べたよな。泣くという行為は、相当エネルギーを消費するものらしい。

7月2日(金)
 ところがである。散々泣いた後で、ハッと私は気づいたのだ。考えてみれば『鉄道員』は、相当女を馬鹿にしたセクハラ映画ではないだろうか。
 だって乙松は子供が死んだ日も、妻が死んだ日もホームに立ち続けた男だ。冷たくなった子供を抱き、妻が乙松を責めても、彼は苦しそうに呟くだけ。
「仕方ねえっしょ。だってぽっぽやだもの」 妻の死にも間に合わなかった乙松を、同僚の小林稔侍がかばって言う。
「ぽっぽやだもの。他に誰が発車の笛吹くんだ?」
 「ぽっぽやだもの」で全て片づけられちゃ女はたまらない。広末涼子が、
「お父さんのこと、ちっとも恨んでないよ。だってぽっぽやだもの」
 と言うが、こりゃ大嘘だろう。今ならあんな夫、妻子に逃げられて当然だ。
 妻の大竹しのぶがなかなか妊娠しなかったのも、まるで彼女のせいみたいだ。どっちが悪いか、そんなの分かるか?
 散々泣いて損してしまった。今となっては、妹・ヒロスエの爽やかなセーラー服姿だけが瞼の裏に蘇ってくる。ひょっとして私も似合うかもしれない。
「押入れから出してみようか、セーラー服」
 などと考える今日この頃である。
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